要約筆記者の倫理綱領

前文

私たち要約筆記者は、すべての人が個人として尊重される社会の実現を目指している。そのために聴覚障害者を含む国民一人ひとりの権利擁護の観点から、コミュニケーション支援として、質の高い通訳サービスの提供に努める専門職であることを言明する。

  1. 私たちは、すべての人の尊厳を認め、かけがえのない存在として一人ひとりを尊重します。
  2. 私たちは、通訳現場における秘密の保持を絶対の価値とする倫理観を持って行動します。
  3. 私たちは、要約筆記によるその場の通訳を確実に行うために、知識、技術の獲得にたゆまぬ努力をします。
  4. 私たちは、専門職として広く社会に要約筆記への正しい理解を広め、啓発に努めます。

私たちは、要約筆記事業において必要な規範を「要約筆記者の倫理綱領」として制定し、これを遵守する。

1.利用者に対する倫理責任

  1. (障害特性の理解)
    要約筆記者は、利用者の障害特性を理解し、利用者の主体的な社会参加と自己実現を支援する。
  2. (利用者の自己決定の尊重とエンパワメント)
    要約筆記者は、利用者の自己決定を尊重し、また、それが困難なときにも可能な範囲で自己決定が表明できるよう、必要な情報を提供し、支援する。
  3. (プライバシーの尊重・秘密の保持)
    要約筆記者は、利用者のプライバシーを尊重し、業務上知り得た情報を本人の了解なしに第三者に提供しない。また、秘密の保持は業務を退いた後も同様とする。
  4. (利用者の最善の利益のための情報提供)
    要約筆記者は、利用者への援助のなかで関係機関との情報共有が求められる場合には、利用者の利益を最優先し、適切な情報提供の内容と方法に配慮する。

2.通訳実践における倫理責任

  1. (最良の通訳を行う責務) 
    要約筆記者は、通訳現場において最良の通訳を遂行するために、自らの専門的知識・技術を提供する。
  2. (連携・協働)
    要約筆記者は、通訳現場において、利用者の利益のために、他の専門職等と連携・協働する。
  3. (通訳現場での綱領の遵守)
    要約筆記者は、通訳現場で、他者からの求めに対し、秘密の保持を絶対の価値とする本綱領の原則を遵守し、その基本精神の尊重を関係者に働きかける。
  4. (環境整備)
    要約筆記者は、利用者が円滑なコミュニケーションを行えるよう、通訳現場での環境整備に努める。
  5. (業務改善)
    要約筆記者は、常に自らの通訳業務を検証し、その技術と知識の向上に努め、さらに、必要な業務の改善を関係各所に求める。

3.社会に対する倫理責任

  1. (共生社会の実現) 
    要約筆記者は、すべての人が尊重され、誰もがその人らしく、生きることができる共生社会の実現を目指すよう努める。
  2. (社会への働きかけ) 
    要約筆記者は、社会における不合理から、音声情報の獲得に不利益をきたす人々に対し、当事者や他の専門職等と連携し、効果的な方法をもって社会に働きかける。
  3. (エンパワメント)
    要約筆記者は、社会に向けて聴覚障害への理解を求め、必要な情報提供を行うことを通じて、市民と社会のエンパワメントを実現する。
  4. (実践の検証)
    要約筆記者は、共生社会の実現に向けた制度等の構築を図り、その行動を常に検証し、方向を過たないようにする。

4.専門職としての倫理責任

  1. 1)(専門職の自覚)
    要約筆記者は、専門職として自覚的な通訳の実践を通し、社会的信用を高める。
  2. 2)(社会的信用の保持)
    要約筆記者は、その場に応じた品行を保ち、専門職の社会的信用を損なわないよう行動する。
    また、他の要約筆記者の言動により社会的信用が損なわれる事態に直面した場合には、本人にその事実を知らせ、必要な対応を促す。
  3. (専門性の向上)
    要約筆記者は、最良の通訳を行うために、進んで教育及び研修に参加し、他の要約筆記者と共に通訳技術及び援助方法の改善と研鑽をとおして専門性の向上を図る。
  4. (研究・参画)
    要約筆記者は、要約筆記制度の充実及び発展について、その調査及び研究を行い、また、関係機関とも協働し制度の発展に寄与する。
  5. (身分保障)
    要約筆記者は、社会に向けてその専門性を提示し、専門職にふさわしい待遇、身分保障を求める。

2014年8月6日策定
(全要研許諾第21号)
©2014(特非)全国要約筆記問題研究会