要約筆記とは

社会の多くの場面は、音声でのコミュニケーションを中心としており、聴覚障害者は他者とのコミュニケーションが取りづらい状況に置かれています。
要約筆記は、話し手の伝えたい内容をその場で文字にして伝える「通訳」の役割をします。現在は、手話通訳と同様に福祉サービスとして行われており、講演や研修、面談など幅広く利用されています。
要約筆記は聴覚障害者の音声を知る権利を保障し、利用する方々が自分の力を発揮して、生き生き暮らせるようサポートするものです。

要約筆記の実施形態

要約筆記の実施形態は、情報を必要とする人々の条件や、場所や機材の条件により、さまざまな実施形態の中から最善の方法を選ぶことができます。主な実施形態は、次の通りです。

ノートテイク

利用者の隣で用紙に書く、またはパソコンで入力する方法です。
利用者は特定の1人から2人に対して行われる通訳です。

全体投影

OHCやOHP、パソコンを使い、要約筆記した内容をプロジェクターでスクリーンに投影し、会場全体から利用できるようにします。

遠隔要約筆記

インターネットとオンライン会議システムを利用し、オンライン上の利用者が要約筆記を利用する方法です。要約筆記者も会場に要約筆記者がいなくてもオンライン上から要約筆記を行います。

要約筆記の必要性

一般的に、聴覚障害者は手話で会話ができるとの認識されていますが、実際には手話で完全なコミュニケーションをとれる人の数は多くはありません。とりわけ中途失聴者や難聴者は、第一言語を音声言語としている場合が多く、積極的なコミュニケーション手段として手話を覚えることが難しい傾向があります。そのため言語を文字として理解できる識字能力を活用し要約筆記を主な情報保障手段とし、手話を会話の補助手段とすることが増えています。

「聴覚器に支障はないが音声での情報取得を困難とする症状」や「特定の音域での音声情報の取得を困難とする症状」を有する人々にとっても、音声情報と併せて視覚情報が提供されることによって内容の把握が容易になるという効用が認められています。

要約筆記の基本

要約筆記には「速く、正しく、読みやすく」の三原則があります。

  1. 速く
    聴覚障害者は要約筆記を読んで、内容を理解してから意見を考えたり行動します。話されていることを要約筆記が伝えるとき、大きなタイムラグがあると聴覚障害者の行動が遅れがちです。ほかの人と同じように参加するために話に追いつく同時性は、聴覚障害者の参加を保障する重要な要素です。
  2. 正しく
    間違った情報は、情報の理解やその後の行動に大きな影響を与えます。話し手の「言いたいこと」を正確に伝達することが「正しく」だといえます。正しく伝えることの大切さはいうまでもありません。
  3. 読みやすく
    聴覚障害者は、要約筆記を利用する場合、話し手の言いたいことを掴もうと集中して読みます。また研修や講演会では長時間読み続けます。その疲労度を軽減できるよう視覚的な読みやすさ、理解面での読みやすさを達成することが大切です。